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植物の時間
自然には色々な種類の植物が存在していますが、それぞれに成長の速度は違います。
ネズミとゾウの時間の感じ方が違うのと同じようにです。
植物の種類によって一生の時間はそれぞれ違います。
今回は盆栽だけではなく植物全体の話です。
園芸の世界では当たり前の事なのですが、盆栽だけをやっていると案外と気にしなかったりしますね。
植物は①種が発芽して②花が咲き③実を生らせて④やがて枯れるという一生を送ります。
1.一年草
一年以内に発芽から開花、結実(種をつくる)を行って枯れる植物
2.多年草(宿根草や球根)
結実しても一年では枯れずに何年も生き続ける植物で、冬になると地上部が枯れるものや常緑性のものなどありますが、茎が木質化しないものが多年草と呼ばれています。
3.樹木
何十年も生き続ける植物で、茎が木質化して幹や枝を作るものです。
春に芽吹いて冬に落葉する落葉樹と年間を通して葉が付いている常緑樹があります。
もちろん盆栽は樹木です。(当然ですが)
植物は子孫を残す為に種を作る訳ですが、当然、一年草と樹木では種を作るまでの時間が違います。
樹木は発芽してから数年間は花をつけません。
まずは自身の生長を最優先し、幹や枝葉を伸ばします。
この期間を栄養成長と呼びます。
充分成長したその後に、花を咲かせ実を生らせる段階に入る訳です。
この期間を生殖成長と呼びます。
よく質問される内容で「なかなか果樹に実が生らないんですが」と聞かれますが、ほとんどの場合は若すぎるからです。(栄養成長段階)
ちなみに園芸店などで売っている実付き苗も地植えなどされると生殖成長から栄養成長に戻ってしまう為、安定するまでは実がなりません。
ただし、盆栽など小さい鉢で育てている物は早く老化する為、開花結実までは比較的早いです。
という事で、実が生らないからと言って焦って切ってしまう事が無いように(実際に結構多い事例です)植物のサイクルに寄り添う感じで気楽に楽しみながら待つのが良いかと思います。
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植物に必要な肥料の成分
以前、盆栽にとっての肥料の役割について書きましたが、
今回もう少し詳しく説明しておきます。
そもそも植物に必要な栄養素はどのくらいあるのかですが、
植物の生育には16種類の元素が必要と言われています。
1.空気や水から吸収するもの
酸素 O、水素 H、炭素 C
2.肥料として与える必要があるもの
(1)植物が多量に必要とする、肥料の三大栄養素
・窒素 N:
葉や茎の生育に必要(葉肥)
不足すると葉の出が悪くなり、葉色が薄くなります。
特に下葉から黄変していきます。
多すぎると葉色は濃くなり、枝は徒長し病弱になります。
また、場合によっては根腐れします。
・リン酸 P:
花、実つきを良くする(花肥)
不足すると花付きが悪くなります。
肥料過多による弊害は少ない。
・カリ K:
根の発達と植物の抵抗力を高める(根肥)
肥料過多による弊害は少ないですが、Ca、Fe、Mnの吸収を妨げる。
(2)ある程度の施肥が必要な2次要素
・カルシウム Ca:
根の発達や新芽の生育など植物体全体に必要
三大栄養素に次いで必要な成分で、不足すると下葉が枯れたりします。
酸性に偏りがちな土壌のpHを中性にする。
・マグネシウム Mg:
リン酸分の吸収移動を助ける。葉色を良くする。
・イオウ S:
たんぱく質の元。根の発達を助ける。不足すると十分な生育が出来なくなる。
(3)わずかですが必要不可欠な微量要素
・鉄 Fe:
光合成作用の際に必要な成分(葉緑素を作るのに必要)
・マンガン Mn:
光合成作用の際に必要な成分で、不足すると葉が黄色くなる。
・ホウ素 B:
根の生育に必要。不足すると新芽が枯れたり、根の生育が悪くなります。
・亜鉛 Zn:
新芽の生育に必要。不足すると葉が小さくなったり変形する事がある。
・モリブデン Mo:
窒素の吸収に必要。不足すると葉が枯れるなど、窒素欠乏の症状がでる。
・銅 Cu:
葉緑素を作るのに必要。不足すると新芽が枯れる。
・塩素 Cl:
光合成作用の際に必要な成分。不足すると全体的に葉が枯れてくる事があります。
※微量要素は自然界から吸収できるものがほとんどなので、あまり与える必要はありません。
ですが、土の量が限られている鉢植えの場合は微量要素が含まれた元肥などを用いると効果的です。
※植物の生長には、光と水と栄養素(16元素)が必要不可欠なのですが、必要とする要素のうち一つでも不足すると、ほかの要素をいくら万全に整えても上手く生育する事ができません。そのため、植物をしっかりと育てる為には欠乏・過剰症状を把握し、光と水と肥料をバランス良く管理していく必要があります。
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美男葛(ビナンカズラ)
今年は沢山花芽が付いた。
このうちどれだけ実に生ってくれるかな。
昨年はかなりの数が落ちてしまったので、今年は春から肥料を多めに与えて培養しました。
ビナンカズラは雌雄異株のものが多いのですが、同株のものも存在しています。
とはいえ、花は雄花と雌花が別々に咲きますので、人工授粉するか複数株置くようにした方が確実です。
肉厚な花弁が特徴です。この花は雄花です。
で、こちらが雌花です。
この盆栽は持ち込んで数年経っている為、葉は比較的小さくなっており、徒長枝も少ないです。
来年は植え替えかな。
つる性植物に共通して言える事ですが、根の張りが早いので、毎年か2年に一回は植え替えした方が、樹の生育は良くなると思います。
ビナンカズラはサネカズラの別名ですが、盆栽ではこの名前で流通しています。
実も非常に特徴的なので、秋が楽しみです。
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蓮華升麻
今年も咲いてくれました。
やっぱりいい。
レンゲショウマは最も好きな花のひとつです。
この質感はどうやったら表現できるんだろう。
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深山海棠(みやまかいどう)
ミヤマカイドウの実が少しずつ色付いてきています。
実物は日当たりの良いところに置くと綺麗に色付くので、
片側にしか日が当たらない場合は、たまに回転させてあげる事で均一に色付きます。
ミヤマカイドウやハナカイドウは姫リンゴの受粉樹としても重宝しますので、
一緒に置いてあげると相乗効果で両方とも実付きがよくなります。
特に人工授粉しなくてもよく生っている印象がありますね。
バラ科はどうしても病害虫が付きやすいので、
日当たり風通りの良い場所に置いて、定期的に消毒をする事が肝要です。
花芽は7月頃に分化するので、剪定は春の花後(実が付かない枝)か花芽を目視できる冬期に行ってください。
比較的簡単に実が生るので非常に楽しい樹種です。
ちなみにミヤマカイドウはズミの仲間で、
カイドウ(ハナカイドウ)とは同じリンゴ属ですが、別の種になります。